コラム「南風」 高江の生き物たちを殺さないで


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 2012年1月19日、東村高江のN4ゲート前で沖縄防衛局員が「工事をさせてください、工事車両を通してください」と叫んでいる間、私は付近でチョウを数えていました。数時間の間に16種のチョウが合わせて50頭以上目撃できました。この季節にこれだけのチョウを見ることができる場所はほとんどありません。局員に「ほら、モンキアゲハが飛んでいるよ」と声を掛けると少しだけ顔を上げてくれました。

 高江の森はすでにたくさんのデータが示しているように極めて自然度の高い貴重な環境です。米軍ヘリパッド建設はこの森の生き物たちの生息地を消失・分断し、周囲の生態系にダメージを与えます。
 ヘリパッド建設で高江の森を壊すことはそこに生きるたくさんの命を殺すこと。ノグチゲラを殺さないで。ヤンバルクイナを殺さないで。トゲネズミを殺さないで。イシカワガルを殺さないで。ヤンバルテナガコガネを殺さないで。リュウキュウウラボシシジミを殺さないで。高江の生き物を目の前にしていつまでそう願わないといけないのでしょうか。
 地球上で沖縄のやんばるにしかいない生き物がここにたくさんいるのです。この森の生き物の命は日本政府のものでもアメリカのものでもありません。長い時間をかけて作られたこの森は壊したら元に戻りません。ここにしかない環境を、人の手で作れないこの森を、壊してはいけません。
 今もノグチゲラがせわしく木を突き、イボイモリは静かに夜を待ち、リュウキュウヤマガメはのんびりお散歩しています。リュウキュウウラボシシジミの幼虫は暖かい日に食草を食べながら春に飛ぶ準備をしています。たくさんの生き物たちがこの森を信じて身を任せ、未来に種をつなぐために生きています。見えないふりはもうやめてください。
(宮城秋乃(みやぎあきの)、日本鱗翅学会自然保護委員)