コラム「南風」 タンカーユーエーと親心


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 秋は披露宴シーズン。私は司会者として携わる機会があったり、友人の披露宴にお呼ばれしたりする機会があります。

 最近はお子さんが生まれて落ち着いてから披露宴を挙げたいという方も多く、式の中で1歳になったお祝いをと、タンカーユーエーを盛り込むことも多くあります。みなさんよくご存じかと思いますが、沖縄では子どもが1歳になると、お金、そろばん、筆、赤飯、本を子どもの目の前に並べて何をとるかで将来を占います。性別によって並べるものが変わったり、いろいろな意味ややり方があるようですがお金だと金銭的に困らない、そろばんは商売上手、筆は役人になれる、赤飯は食べ物に困らない、本は頭がよくなると言われています。この披露宴の舞台で行うタンカーユーエーがとても微笑(ほほえ)ましくて面白いのです。これまで見てきた中では子どもたちはほぼお金をつかみます。不思議に思って観察をし、あることが分かりました。
 タンカーユーエーの際両親がそれぞれの道具の後ろに立つのですが、お母さんが大体お金の後ろに立っているのです。両親が呼んでいるほうへ、ハイハイをして向かうけれど、一緒に過ごす時間の多いお母さんのところに行こうとしたら目の前にお金がある。だから子どもたちは自然とお金をつかんでしまうのでしょう。
 他の司会者から聞くところによると、中には大勢の出席者が見守る前お金をそろばんや筆より若干前にセッティングするお母さん、「ほ~らほ~ら」とお金をつかんで子どもに握らせようと必死なお母さん、お金をつかむまでやり直しをするお母さんもいるとのことです。お金に困らず暮らしてほしいという親心が自然とそうさせているのでしょうか。そう思うと披露宴のタンカーユーエーは子を想(おも)う親の気持ちを出席者が確認できる温かい瞬間に思え、わたしは胸が熱くなるのです。
(山田真理子、フリーアナウンサー)