コラム「南風」 「声の収穫」


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 ナレーター業というのは、「声」で生業をたてていくわけだから日頃から「声のコンディション」には、当然のことながらある程度気を使っている。
 このことに関しては、同業者といえど、かなり個人差がある。

 例えば、当方は、睡眠や飲酒のタイミングはもちろんのこと、それに加え、柑橘(かんきつ)系の飲み物はなるべく控えるようにしている。
 というのも、ナレーションをするということは、一般の方々よりも「音読」というカタチで喉を使用しているため、自分でも知らず知らずのうちに喉にダメージを抱えていることが少なくない。
 そんなところに酸味のある柑橘系の果汁は少々刺激が強く、より痛めてしまう可能性があるからだ。元来、コタツとミカンのコラボレーションが給料日の次に大好きで、爪が黄色くなるまで食べるのを至福の時としていた。
 しかしながら、この仕事をするようになってからは、爪が黄色に染まることはもうなくなってしまった。そこで、たまに模索しているのが、喉になるべく負担をかけない「発声法」だ。「発声」は喉だけに頼るのではなく身体(特に体幹)を連動させるほうが良いので、さまざまなトレーニング法がある。声帯や身体感覚は人それぞれなので、どのやり方が一番良いというのはなく、自分にあったトレーニング法に出合えればラッキーという感じだ。
 最近、知り合いのボーカリストが2時間を超えるライブを終えてなお「声」が少しもヘタレていなかったので、その「発声法」のコツを簡単に一言で教えてもらった。すると、この方法、かなり当方とも相性がよく、すぐに実感として現れた。
 ジャンルは違えど、「声」を通してある一つの感覚を共有できたことが、その時はなによりうれしく、大きな収獲となった。
(知花悠介、ナレーター タレント)