コラム「南風」 石川県で出会った木々


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 先日旅行で石川県に行ってきました。日本海側の地域はきっと寒いだろうとヒートテックやら厚手のコートに手袋を持っていったのですが、そこまで寒くなく拍子抜けしました。(本土の冬を重く受け止め準備をし過ぎるウチナーンチュはきっと私だけではないはずです)

 石川県といえば食はカニやエビなどの魚介類、茶屋街、武家屋敷など観光地も本土感を味わうにはバッチリでした。京都ほど混んでいるわけでもなく上品な街はゆったりとした時間が流れていました。街中で個人的に驚いたのは「木の大きさ」です。本土の樹木のほとんどは針葉樹林なので高さはもちろんあるのですが、樹齢数百年以上の木があちこちにあるのです。そんな幹が太く苔(こけ)が蒸した木々が街中、カフェの庭などに当たり前のように生えています。温泉街では樹齢2300年の杉の木に出会いました。神社の御神木で幹に触るとご利益があるパワースポットとして知られています。周りのどの住宅よりも高い杉の木は、太さも大人4人くらいで手をつないで囲えるかというほどです。木に触れてみると何という重厚感! 木というよりはもはや建物に触れているかのような厚みでした。どうしてこんなに長生きの木が多いのだろうかと不思議に思って尋ねると、石川県は他府県に比べて戦争の被害がそれほど大きくなかったからだろうと教えてもらいました。
 最終日は兼六園へ。兼六園では「雪吊り」といって樹木が雪の重みで倒れないよう綱を張って固定していました。遠くからみると何だかクリスマスツリーのようです。石川の木の長生きの理由は、戦火をまぬがれた幸運だけではなくて地域の木への愛情なのでしょうか。丁寧に手入れをされた木が、人の通る場所、集まる場所にあることに石川の人の心の余裕を感じました。
(山田真理子、フリーアナウンサー)