コラム「南風」 施設退所児童の自立支援


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 私が理事長を務める、児童養護施設「島添の丘」では、ことし3月に高校を卒業した3人の若者が、社会に巣立っていった。3人のうち1人は大学進学、2人はホテル業と製造業の職場に就職し、さまざまな障がいを克服しながら8カ月が経(た)った現在でも頑張ってくれている。ぜひ、施設やいろんな人の力を借りながら、自立や夢に向かって一歩一歩歩んでほしいと願っている。

 施設では18歳で自立しなければならず、それは、社会の常識からすると、あまりにも早すぎる自立といえよう。今日、多くの若者は成人しても、親のすねをかじりながら一人前の大人に成長する。ところが、施設の若者たちは、高校を卒業すると施設退所という自立を強いられてしまうのである。そのため、職場等に適応できずに不安定な生活を送る若者も少なくない。
 「平成23年度・24年度九社連児童養護施設協議会自立支援の実態調査報告書」によると、沖縄県内の児童養護施設で高校卒業後就職した「児童」のうち、半年以内に離職した「児童」が13・4%、1年以内では40・3%で、1年以内の離職率は九州全県平均(29・5%)よりかなり高くなっていて、沖縄県の退所児童の置かれている状況の厳しさを反映している。
 このような施設退所児童の自立を支援する取り組みも行われている。例えば、大分県の支援員による伴走型自立・就労支援や東京都のように自立支援コーディネーターの配置など先進的な自治体もある。また、県内の民間サイドでも「にじのはしファンド」のような大学進学者を支援する団体も出始めている。
 さらに、全国的には「日向ぼっこ」といった施設出身者による当事者活動も行われている。今後は、施設等を退所しても安心した生活を営むことができる当事者主体の自立支援の仕組みづくりが求められている。
(神里博武、社会福祉法人豊友会理事長)