コラム「南風」 貧困問題と弁護士


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 私は「貧困弁護士」です、そう申し上げたら、みなさんはどんなことを連想されるでしょうか?
 少し前に書かせていただいたとおり、「離婚弁護士」とは離婚を繰り返す弁護士のことではなく、離婚問題を主に取り扱う弁護士のことです。それと同じように貧困弁護士とは、経済的に貧しい弁護士ではなく、貧困問題を取り扱う弁護士のことです。

 もっとも、貧困問題だけを取り扱っていたら、私自身が経済的に貧困状態に陥ってしまうかもしれません。ですから、私が「貧困弁護士」ですと申し上げるのは、貧困問題「にも」取り組んでいる弁護士という意味になります。
 「貧困弁護士」として活動する中で、貧困問題と弁護士との関わりについて考えさせられることがあります。例えば、私が取り組んできた生活保護の裁判について、手弁当で弁護団に参加してくださる熱意のある若手弁護士もいれば、「裁判なんかしないで行政と交渉すれば」とおっしゃる中堅弁護士もいます。「頑張っているね」と励ましてくださる先輩弁護士がいらっしゃる一方で、「正義の味方だね」と冷やかすベテラン弁護士もいらっしゃいます。
 そもそも、生活保護費の増大や不正受給などに関する認識について、誤解と偏見に基づくような発言をされる弁護士も一部にいらっしゃるようです。
 私自身、偶然に生活保護の裁判に取り組むようになったのであり、それ以前には生活保護に関する認識は非常に乏しいものでしたので、あまり人のことは言えません。
 しかし、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」弁護士の中に、生存権に関わる生活保護の問題に誤解や偏見をお持ちの方がごく一部ですがいらっしゃるというのは、「貧困弁護士」として悲しいものがあります。
(大井琢、弁護士)