コラム「南風」 インタビューこぼれ話


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 私が小学生の時に使っていた学習帳には、1日ごとに沖縄の黄金(くがに)言葉が記されていました。子どものころから一番印象に残っていたページが「言葉、銭使(くとぅば、じんじけー)」。言葉はお金を使うように大切に使いなさいと書かれたページでした。

大人になって人前で話すという仕事に就いた私は、自分自身が普段話す言葉をブラッシュアップするよう努めています。とは言ってもまだ若輩者で、先輩方からご意見をいただくこともあります。最近では自分の話す技術を磨く以外にも人が話している言葉にとても敏感になりました。現在エフエム沖縄で「オリオンびあぶれいく」というインタビューの時間があり、県内で活躍するさまざまな方をゲストに招きお話を伺っています。オンエアで放送しているお話以外にも事前の打ち合わせの際に「今の話をオンエアで紹介できたら」と思うような言葉がたくさん出てきます。
 以前あるゲストの方に「最近のお仕事の調子はどう?」と聞かれ「忙しいですね」と答えたことがあります。そうすると「忙しいという漢字は、心を亡くすと書くのよ。自分は今心がない状態ですよと人に言っていることになるんだよ」と言われたことがありました。忙しいという言葉を私はそれまで毎日のように使っていたのですが、毎日心がない状態というのを人にアピールしていたことになるのかと思うと恥ずかしくなってしまい、その後忙しいという言葉をあまり使いませんでした。
 しかしよくよく考えてみると「心をなくすほど何かに向かって一生懸命に取り組んでいる」と考えたら、忙しいという表現も悪いようには感じません。言葉一つも突き詰めて考えるといろいろな捉え方があると分かると、インタビューをする楽しさが増えつつも、お金のように大切によく考えて使わなければと思います。
(山田真理子、フリーアナウンサー)