コラム「南風」 施設退所児童の自立支援(2)


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 児童養護施設では、子どもたちの自立を目指した養育支援を行っている。中学・高校生になると、退所・自立に向けた支援(リービングケア)が行われる。児童養護施設の養育は、退所後の自立がどの程度達成できたかによって評価することもできる。もちろん、児童養護施設のみで、自立支援を行うことは困難で、社会的な支援が不可欠である。

 今回は県内の社会的自立支援の動きをまず紹介したい。社会的養護を必要とする子どもたちの自立にとって、大学進学は特別の意味がある。ところが、大学進学には経済的壁が大きく立ちはだかって、断念せざるを得ない若者も多い。そこで、大学生に奨学金を給付しているのが「にじのはしファンド」である。奨学生第1号は島添の丘卒園児のA君であるが、彼は昨年、無事に大学を卒業し、B県社会福祉事業団に就職した。また、ことしは沖縄大学がこの子らのために、4年間の学費免除という画期的な支援策を打ち出してくれて、5人の児童養護施設、里親出身者を受け入れてくれた。
 施設退所後、自立するためには自動車運転免許は必要であるが、その取得費用を工面することは厳しい状況にある。ことしからは県内の指定教習所が10万円を免除することになった。また、退所児童が自立するための大きな壁として、アパートを借りる際の保証人問題がある。今回「沖縄大家の会」の好意で、保証人なしでアパートを借りることができるようになった。
 さらに、新しい動きとして卒園した若者たちによる施設支援がある。これまでも、もちつき大会等行事に関わってくれていたが、島添を卒園した若者たちが、施設への感謝の印(しるし)として、にぎりやちらし、魚のあら汁を在園生、職員に振る舞ってくれた。今後もこのような良き伝統を継承発展させることを期待したい。多くの善意に、感謝。
(神里博武、社会福祉法人豊友会理事長)