コラム「南風」 流産について


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 全ての妊娠の10~20%は初期で流産してしまいます。流産は決して珍しいことではありません。そのほとんどは、受精した卵そのものの組み合わせが悪いことが原因で、もともと育たない卵が自然淘汰によって流れるようになっているのです。

 しかし、自然の摂理で仕方がないこととはいえ、一度期待を抱いた後にお別れすることは、やはりショックです。中にはいったん赤ちゃんの心臓の拍動が見えていたにもかかわらず、結局流産してしまうこともあります。短い間でもおなかの中で一緒に過ごしてくれた赤ちゃんとさよならするのはとてもつらく悲しいことです。でも、赤ちゃんはお母さんを傷つけるために来るのではなく、お母さんの笑顔を見るためにやってくるのだと私は思います。
 前回もご紹介した産婦人科医池川明先生は、著書「ママ、さよなら。ありがとう」のなかで、一度お母さんのおなかに来た赤ちゃんが、自分でタイミングを選んでお空に帰っていく、そして、お母さんにたくさん「ありがとう」というメッセージをくれるのだとおっしゃっています。流産という深い悲しみを経験することで、母親として一回り大きく成長する機会が与えられるのだと思います。流産は深い悲しみですが、ショックが大きい分、より深い気付きのチャンスを与えてくれます。流産を経験されたお母さんが、赤ちゃんが命をかけて伝えてくれたメッセージを受け止め、悲しみを乗り越えて、前向きに歩み出していけることを心から祈っています。
 半年間にわたって、私が日常の診療のなかで大切にしている、避妊、性感染症、禁煙、食生活、子どもとのコミュニケーション、母乳育児、お産などについてお伝えしてきましたが、今回が最後の掲載になります。お付き合いいただきありがとうございました。
(島袋史、ゆいクリニック院長 産婦人科医)