コラム「南風」 求めるものが変わっても


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 現代はインターネットで買物ができるようになり、小さな子どもがいたり、高齢で歩くのが困難など、いろいろな事情で外に出ることができない方にとって、とても便利になりました。

 家から出なくても全国の情報や商品が簡単に手に入りますが、正しい情報や良い品物を見極める力が必要です。会話をしなくてもサービスが手に入る便利さと引き換えに、コミュニケーション能力が低下するような気がして、少し不安になります。私は一日の大半を牧志のマチグヮーで過ごし、活性化を通して県内外の商店街関係者はもちろん、事業を共に進める仲間たちと交流する機会を与えてもらっています。
 沖縄南部観光の要として施設を創業し、引っ張る会長との出会いもありました。会長自らの経験談などをユーモアたっぷりに話していただきいつも楽しく聞かせてもらっています。「ここは生地と布で栄えた街、これら古くからの店舗も大事にしなさい」と気付かせてくれた方でもあります。人対人のこの場所は、人が一番の財産であり沖縄らしさの象徴でもあると思っています。飾りっ気のない人たちがまんまの自分で生活しています。だからこそ、みんなで頑張りバトンを繋(つな)げようとしています。
 戦後まもないころ、ものを手に入れるためにマチグヮーは人であふれていました。時代が変わり、求めるものが変わっても、変わらない場所であってほしい。私にとってマチグヮーは、人との出会いを通して自分次第でどんどん成長できる、大好きな場所なのです。マチグヮーは人がなくしかけているものを思い出させる、大きな役割を果たす時がくるはずです。
 今回で最終話ですが私の拙(つたな)いコラムを「毎回楽しみにしてるよ」と声を掛けてくれた見ず知らずの方々、どうもありがとうございました(笑)。
(新里俊一、一般社団法人なは市場振興会理事長)