コラム「南風」 クラシックコンサートへの誘い


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 「クラシック音楽は敷居が高くて…」「行ったことないし…」「面白くなさそう…」。われわれ、演奏者が聞くと耳が痛い声が聞こえてきそうですが、声を大にして言いたい…。そんなことは決してありませんよ。

 行ったことのない方は、一度ぜひ、音楽会に足を運んで、生でしか聞けない楽しみを味わってもらいたいと思います。まずは迫力を味わえるオーケストラはどうでしょうか。例えるならば、オーケストラは指揮者というシェフが、多彩な楽器(食材)を使って美味(おい)しいフルコースに仕上げるという音楽です。
 オーケストラは大体70人ほどの奏者が舞台上で音を奏でています。管楽器、打楽器、弦楽器、いろいろな楽器(食材)が多彩な音を作り出します。やさしい音、透明感のある音、重厚感のある音、温かい音、悲しげな音色など。ホールに響き渡る大迫力な音でも耳が疲れないのは、生の音だから。演奏者は全身全霊をかけて、その曲に向き合い、一音一音、音を紡ぎだしています。それはデジタル化された音楽からは決して味わうことのできない温かい音のシャワーです。
 プログラムにある作曲家の意図を読んで調理するのは、シェフである指揮者です。シェフの腕により、味付けされ、また音楽はよりいっそう美味しくなるのです。そして、最後にスペシャルなフルコースに欠かすことのできないのは観客です。同じ時間、空間を共有すること、また、まなざしや拍手が私たちのエネルギーとなります。音楽とは「音」を「楽しむ」こと。肩の力を抜いてクラシック音楽を聴いてみてはどうでしょう。寝てしまっても大丈夫(いびきは困りますが…笑)。
 最後にもう一度。「クラシックコンサートに足を運んでみませんか?」。終わった後にきっと温かな心地よい幸福感を味わえるでしょう。
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)