コラム「南風」 今日は模合だ!


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 ほとんどの方には馴染(なじ)みのない話かもしれない、世の中には研究会や学会というものがある。
 特定の学問や研究を行うには、一人より同学の士を集めた方が効率的な情報の収集ができ、互いの切磋琢磨(せっさたくま)の機会も増大する。

 また、研究者同士がそれぞれの研究成果を発表し、社会に還元するためには個人より、組織の方が何かとアピールしやすい。
 研究会や学会はこのような要求から設立されることが一般的である。私の場合も、考古学と博物館学に関わっているので、当然、この分野の研究会や学会に属している。
 しかし、専門分野細分化の影響もあって、考古学や博物館学に関わる研究会や学会は、今や数えきれないほどに増えている。こうなると、致し方なく複数の組織に関わらざるを得ない。
 例えば、考古学では日本全体を対象とする日本考古学会や考古学研究会、地域的な研究を志す九州考古学会、鹿児島県考古学会、沖縄考古学会、あるいは特定の対象に絞った貿易陶磁研究会や遺跡探査学会、九州古墳研究会など、数え上げたら本当にキリがないのである。
 当然、これらの学会や研究会の会費や旅費を含む参加費用は自前が原則である。子育て費用やローンなどが重なると、これらの出費はかなりの負担となる。
 だが、研究会や学会に参加すると、いやが応でも研究の第一線に立つ仲間の成果や情熱に煽(あお)られて、自分の怠け心と不勉強さを反省し、新たな研究意欲を奮い立たせることができる。
 実は研究会や学会で顔を合わす人ほど、やはりちゃんと成果を積み重ねていることが多い。決して無駄な出費ではないのだ。
 そこで、遊びに使う費用と時間を今後は研究に振り向けよう、と決心して会場を後にするものの…。
 あっ、今日は模合だ!
(池田栄史、琉球大学教授考古学)