コラム「南風」 バレエと空手の巻


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 バレエといえば西欧の格調高い芸術で、敷居が高いと思われがちである。それでも表現の優雅さ、情操の豊かな発露、身体的成長への著しい効果が認識されて多くの子どもたちの習い事となっている。県内にも十何カ所の研究所があり、公演を見る機会が多くなった。

 日本の高校生が昨年、国際バレエコンクールで一位に輝いたニュースはまだ温かいが、今年も日本から上位入賞者が続いている。そんな中、全国のコンクールで上位入賞する沖縄の子たちも増えている。つまり世界のレベルに近づく日本に、沖縄のレベルもまた着実に近づいているのである。
 ところで、西欧人の牙城であったバレエに東洋人が認められる、その逆の文化現象として沖縄の空手がある。沖縄の独壇場だった空手が世界に普及して長い。
 僕が米国に留学したのは1970年代のことだが、すでに老若男女、空手を知らぬ者はなかった。空手のセンスが良いことは沖縄人(ウチナーンチュ)としての自己証明であると誇りに思い、ニューヨーク時代は学業そっちのけで、ダウンタウンの道場通いに励んだものだ。
 わが家のバレエ教室は昔からお稽古場と呼ばれ、その呼び名に愛着があり、今でも時折空手の稽古をする。決して強くはない僕にとって空手の型は勇壮な男踊りなのだ。どちらも四肢を伸縮、捻転、跳躍させるのだが、東洋と西洋の動きについてずいぶん考えてきた。
 最近の外国の空手家は競技空手が強いだけでなく、型にしてもかなり洗練されてきた。一方、東洋人の審美的、身体的感受性がバレエにフィットし、かつ最近の子たちは七頭身となって開花してきた。つまり、東洋の文化と西洋の文化が交差してきたのである。
 とはいえ武と舞である。本当の意味での比較として、外国人が沖縄人に遜色なく琉舞を踊るのを見ることができるのはいつの日か。
(南城秀夫、通訳・作家)