コラム「南風」 楽しく学ぶには?


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 初回にも少し触れたが、考古学の専門用語では、土の中に埋もれた家の跡やお墓などを遺構、そこから出て来た土器や供え物などを遺物と呼ぶ。遺構は過去の人々が残した不動産、遺物は持ち運びができる道具だと考えれば分かりやすい。遺構と遺物が組み合わさった場所が遺跡である。

 沖縄の代表的な遺跡には貝塚やグスクがある。グスクは丘陵の上にあり、石垣をめぐらせることが多いので、誰でも一目で分かる。しかし、貝塚やお墓、家の跡などは基本的に土に埋もれているため、どこにあるのかさえ分からないことが多い。そこで、近くに説明板や標柱を設置して、遺跡であることを知らせ、その内容を紹介することが一般に行われている。この設置作業は各市町村の教育委員会が担当している。それは文化財保護法という法律によって、遺跡の管理が市町村に任されているからである。
 当然、遺跡から出てきた遺物の管理も市町村が行うことになる。このため、各市町村にはこれらの遺物を展示する博物館や資料館を設置するように努めることが求められている。遺跡や遺物はモノ言わぬ存在である。その存在意義、あるいは面白さを分かってもらうには、説明板や標柱、博物館や資料館の役割が重要なことは言うまでもない。
 しかし、これらにはどうも堅苦しいイメージがついて回る。しっかりとした学問的裏付けを持つことは必要だが、上から目線で学習を強いられるのは誰でも苦痛だろうと思う。
 それならば、もっと楽しく過ごしながら、いつの間にか遺跡や遺物のことが理解できているような仕組みが作れないだろうか。考古学や博物館学に関わる人間として、真面目に思案し続けているところである。
 でも、そんな仕組みはそう簡単に思いつかないし、誰か良い知恵ないかなあ?
(池田栄史、琉球大学教授 考古学)