コラム「南風」 恋する楽器(1)


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 私が今、弾いているヴィオラ。運命ともいえる今の楽器に出会うまで…探し始めて、な、なんと10年の月日がかかりました。楽器選びは恋人探しより難しい~!という話を今回と次回に分けてお話ししたいと思います。

 まず、弦楽器はイタリア、ドイツ、フランスなどヨーロッパで多く作られています。それぞれ国によって微妙に音の質というか、ニュアンスが違います。私はイタリアの楽器が好き。なんといっても品格のある艶(つや)やかな音がするので~。また、年代によっても音色の違いがあります。1800年以前のものはオールドと呼ばれます。
 著名な職人が活躍した黄金期です。あの有名なストラドヴァリウスやガルネリデルジェスなど、天才がいた時代です。実は私…師匠の楽器のテストーレ(1600年代)とガリアーノ(1700年代)の楽器を長く使わせていただいた事がありました。それは見た目も美しく、オールドイタリー楽器特有の品のある美音を奏でていました。(あ~思い返しても幸せ)。
 1800年~1950年頃のものはモダンと呼ばれます。オールドから受け継がれた伝統を継承しつつ、次の世代が活躍した時代です。この時代も天才たちが生まれました。スカランペラやプレッセンダ、ファニョーラなどがそうです。モダン時代の最高峰たちです。そして今、私が使っている楽器は1800年代のスカランペラです。やはり例外はなく、深みのあるイタリー独特の品の良い音がします。10年探してやっと出会った運命の楽器です。
 世界的に見ても、ヴィオラはヴァイオリンやチェロの比べると楽器数が圧倒的に少ないので、運命の楽器に出会うのは本当に大変なんです。恋人探しよりもずっと難しい~!かも。縁がないと出会えないんだな~、恋人も、ヴィオラも。
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)