コラム「南風」 学生さんへの期待


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 一昨年、2カ月間ではありましたがフランス・パリの経済協力開発機構(OECD)事務局で働いたことがあります。広く国際経済問題を扱う機関だけあり、多彩な経歴を持つ方々と仕事ができた大変貴重な機会でした。

 パリらしい重厚な建物の中に私の課の執務室はありました。日本と異なるのは各自に部屋が与えられ、連絡はメールや電話が主であることです。慣れない私は「お茶の時間」に積極的に出て、顔を合わせて話すよう心掛けました。
 仕事面では、大規模災害後の各国の雇用対策に関する報告書の作成チームに配属されました。日本では東日本大震災後、速やかに雇用維持のための施策を行うとともに、雇用保険などにより被災者の生活の安定策を講じました。こうしたことを報告書に盛り込むとともに、他国の状況についても調査を行いました。
 私の上司はオーストラリア政府出身の女性でしたが、とても気さくな人柄ながら指摘は鋭く、仕事中は頭を悩ますことも多々ありました。そうした中でも、昼休みに同僚と公園でピクニックをしたり、仕事の後にバーに繰り出したことは楽しい思い出です。また、事務局で活躍する日本人職員の仕事ぶりにも、大いに刺激を受けました。
 その後、委員会に報告された報告書の中で、協力者として私の名前も言及された時は嬉(うれ)しさが込み上げてきました。言葉の面での苦労はありましたが、異なる背景を持つさまざまな人が協力して一つの仕事を作り上げる楽しさを実感しました。
 今年卒業の沖縄の学生・生徒の皆さんの就職内定率は、例年になく高い水準となっていますが、一方で、最近の雇用情勢の改善を受けて「県内志向」が強まっているとも感じます。沖縄の多くの若い人材が将来、国際的にも活躍してくれればと願っています。
(國代尚章、沖縄労働局職業安定部長)