コラム「南風」 風に立つライオン


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 水曜日のレディースデーにふらりと立ち寄った映画館で観(み)た映画は、先日公開になった「風に立つライオン」。さだまさしさんが1987年に発表した名曲を基に作られた映画です。この曲を知ったのは約5年前。以前南風のコラム内(「共に生きる」)で紹介した、アフリカ・スーダンで医療活動等を行っているNPO「ロシナンテス」理事長であり、私とスーダンを繋(つな)げてくれた医師の川原尚行さんの講演会で聴いたのがきっかけでした。

 映画「風に立つライオン」の主人公である医師は、母国を離れ自らの危険も顧みずアフリカの人たちのために懸命に尽くします。私の知る医師・川原さんも同じです。過去に2回行ったスーダンの地で、ロシナンテスの巡回診療に同行させていただいたことがあるのですが、地元の方々が本当に安心し委ねるような顔で川原さんの診療を受ける姿が印象的でした。
“人の為(ため)に尽くすこと”簡単にみえて実はとても難しいことのように思います。ましてや言葉も違う国で、心を開いて信頼されるまでの関係性はなかなか築けるものではありません。
 小学校の卒業式の時、将来の夢として「人の役に立てる大人になりたい」と発表したことがありました。しかしこの映画を観ながら思ったことは、「この方たちは人の役に立とうと思って行動しているわけではないのだろうなぁ」ということ。川原さんは以前「アフリカの人たちが困っている事に、居ても立ってもいられなかった」と話してくれました。
 見返りを求めず、目の前にある事に全力で立ち向っていくからこそ、結果として誰かのためになっていく。褒められるのが好きな私はまだまだです(苦笑)いつの時代にも必ずいる、風に立つライオンたちに見習って走り続けようと、気を引き締めた帰り道でした。
(しおり、シンガー・ソングライター)