コラム「南風」 恋する楽器(2)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私の恋するパートナー、ヴィオラ。運命の楽器と出会うまで約10年の歳月がかかりました。

 これだ!とおもう楽器に巡り会うまでの過程は、まるで恋人(パートナー)探しをしているかのよう~。縁がないと出会えない。特にヴィオラはヴァイオリンやチェロに比べると本数が少ないからなおさらです。実は私の楽器のスカランペラ、10年前に一度楽器屋さんで見かけていたんです。
 そして、弾かせてもらいました。「すごい~!良い音!そしてすごい値段!」
 その時の私には購入するまでの勇気がなく…見送りました。その時に縁があったコンテンポラリー(新作)のカルレッティを購入。新作の楽器はなんといっても健康なのが特徴。そしてパワーがあります。カルレッティはヴィオラの魅力を感じることのできる私の良きパートナーでした。
 楽器はたくさんの事を教えてくれます。その楽器のもつ最大限の良い音を引き出すことができるようになれば、それは技術の向上につながり、音楽の捉え方も豊かになります。
 ある時を境に自分の求める音が楽器を超える時がやってきます。より良い音を追求したくなる、その時が楽器の買い替え時…。そして、また楽器探しがはじまるのです! 私にも、もちろん買い替え時がやってきました。偶然にプレーヤーが手放した直後に楽器屋さんに戻ってきたスカランペラ。もちろん、私の目にとまり、そして悩みます。
 夫が背中を押してくれ、また師匠の助言もあり、めでたく購入。今は良きパートナーとして、なくてはならない最愛の存在です!
 良い楽器は時代を旅します。スカランペラもそう。今は私が使わせてもらっていますが、いつの日か私の元を離れ新しい奏者に出会い、あの艶(つや)やかな美しい音色でどこかで人々を幸せにする日が来るでしょう。
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)