コラム「南風」 出会いは宝


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 先日、高校時代の恩師と久しぶりに再会しました。熱意と突き進む強さを教えてくれた方で、これまでを振り返ると、大事なポイントにはいつも先生の存在がありました。

 今でも忘れられない授業があります。高校1年の入学間もない緊張感あふれる授業の中で、突然先生から投げかけられたのはこんな質問。「君たちの将来の夢は何だ?」
 真っ先にあてられた私は、歌手になりたいということをビクビクしながら答えました。案の定クラスのみんなには笑われましたが、先生はゆっくりとした口調で一言。「よし、先生は君の夢を応援する」。その日をきっかけに、数々のチャンスを与えてくださいました。
 そのころできた初めてのオリジナル曲が『愛の花』という曲。荒削りではありましたが、当時16歳の私なりに綴(つづ)った沖縄へのラブソング。それを先生は素晴らしいと褒めてくれ、全校生徒の前で歌を披露する機会までつくってくださいました。
 夢を夢で終わらせてしまうのは簡単なこと。ですが、勇気を出して自分の思いを言葉にしていくことは、チャンスをつくり出すきっかけになるということを学んだ高校時代。そんな先生が当時からよく言葉にしていた夢は「ネパールの貧しくて学校に通えない子供たちのために、学校をつくりたい」。思いが言葉になり、そして形になる。“オキナワ”の4文字が入ったネパールの小学校には、今ではたくさんの子供たちが元気に通っています。
 教科書だけでは伝えきれない大事なことを、自らの体験で教えてくれた先生。当時を振り返り、懐かしさに浸りながら先生と話をした後、帰り際にこんな言葉をかけてくださいました。
「良い27歳になったね」
 はじまりの季節、4月。この春入学された皆さんにも素敵(すてき)な出会いがありますように。
(しおり、シンガー・ソングライター)