コラム「南風」 恩師との出会い


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 私はこれまで多くの恩師に恵まれてきました。今回はヴァイオリンやヴィオラの恩師との出会いと、教えをお話ししたいと思います。

 ヴァイオリンを習い始めた4歳の頃、母と共にバスでレッスンに通っていました。F先生は美人で、家もおしゃれな一軒家。わが家とはちがうぞ、と幼心にも思った記憶が。レッスンの帰りにご褒美で食べる魚とイカ天ぷらの美味(おい)しさが今でも忘れられません。先生に会いたいのと、天ぷらに惹(ひ)かれて通っていたのは間違いないでしょう。
 小学高学年から高校まではN先生。練習しない不真面目な生徒の私。おまけに思春期の私を辛抱強く、そして長く面倒みてもらいました。やめずに続けてこれたのはN先生のおかげです。
 大学受験になると今は亡き、K先生の門を叩きました。それまでの人生の中で最も練習した時期。「卒業してからが大事!これからが始まりです」。K先生はよくおっしゃっていました。そのとおり、卒業して音楽を学ぶ楽しさ、演奏する楽しみ、そして人として成長することが演奏につながっていく、という大事なことを教えてもらいました。
 その後、運命の出会いのヴィオラに転向します。ヴィオラの巨匠でNHK交響楽団などを歴任し、私も幼い頃からテレビで見ていたS先生との出会いです。レッスンは毎回、衝撃を受けるほどの喜びと驚きの連続。私は今まで何を勉強してきたのか!?と思うほど、ヴィオラに夢中になり、その魅力にのめり込んでいきました。
 「学ぶ時期に年齢は関係ありません」。20代の半ば、転向するには少々遅い私の背中を押してくれたS先生でした。私には他にも恩師と呼べる方々がいます。それぞれの恩師の教えは、心の引き出しに大事にしまっています。必要なときにいつでも引き出せる私の大事な教則本です。
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)