コラム「南風」 高齢社会のフロントランナー


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 日本の人口の高齢化が進んでいます。現在、65歳以上の人口割合は26%となっており、20年後には33%を超える見通しです。これは他のどの国よりも高い割合であり、また高齢化のスピードも他の先進国を大きく上回っています。

 以前、スウェーデンに医療制度の調査に行った時のことを思い出します。私の質問の後、政府の担当者は、日本が高齢化についていかなる施策を講じているか詳しく尋ねてきました。今や日本は、福祉国家と言われるスウェーデンからも注目を集めていることを実感しました。
 高齢化が進む中、経済社会の活力を維持するには、意欲ある高年齢者の就労を促進することが重要になります。労働局では、法に基づく65歳までの雇用をはじめさまざまな施策を推進していますが、企業の取り組みも進みつつあります。昨年の労働局の調査では、希望者全員が65歳以上まで働ける企業は調査企業の7割弱に達しましたし、高年齢者をさらに雇用したいとの事業主の声も多く聞かれます。
 一方で、高年齢者の雇用により若年者の雇用が減るのではないかとの指摘もあります。これについて慶應義塾の清家篤塾長は、昨年のフォーラムにおいて、70~90年代のヨーロッパで高年齢者の退職を早める政策をとったにもかかわらず、若年者の失業率が改善しなかったことを紹介されていました。すなわち、高年齢者の退職を早めた結果、熟練労働者が急減し企業の活力が失われ、かえって雇用の量が減少したのです。
 沖縄は、県全体としては全国ほどの人口減少は予測されていません。このことは沖縄の大きな強みであり、その「人材力」をいかに発揮できるかが将来的な発展の鍵となります。そのためにも、高年齢者の持つ豊かな経験や技能の活用について、改めて考えてみる必要があると思います。
(國代尚章、沖縄労働局職業安定部長)