コラム「南風」 アナウンサーは最後の砦


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 夕方6時が迫る報道フロア。電話やスマホの呼び出し音、デスクや記者の怒声、本番に向けて駆け回るスタッフの足音の中で、アナウンサーは声を張り上げて原稿を下読みします。

 アナウンサーがニュースに備えて、大きな声で原稿を読むのは、発声練習の意味もありますが、原稿の内容をスタッフ全員でチェックするためです。誤りがないか、理解しづらい表現になっていないか、それぞれが持ち場の準備をしながらも、耳を集中させています。
 先日、新人記者が書いた「料理専門学校の生徒が、伝統のチヌダルを…」という原稿がありました。私が下読みをしていると、先輩アナウンサーが「これ、もう一度確認させて」と指摘。再度、その記者に調べてもらうと、チヌダルは誤りで、すりゴマを豚肉にまぶして蒸した琉球宮廷料理「ミヌダル」のことでした。
 「アナウンサーは最後の砦(とりで)」。新人のころに教わった言葉を痛感しました。記者が勘違いしたり、デスクが多数のニュースをさばく中で見落としたりしたミスを、放送前に食い止めるのがアナウンサーの仕事。もし先輩から指摘を受けなければ、私は視聴者に誤った情報を届けてしまい、取材先にも大変な無礼をしていました。琉球文化について勉強不足な自分に改めて気づかされた出来事です。
 ニュースは、政治や経済、スポーツや文化まで、多岐に渡ります。アナウンサーはその内容をきちんと理解している必要があり、絶えず教養を磨くことが求められます。年次を重ねるほど、その責任の重さが身にしみます。
 今日も放送時間が近づくと「チーム報道」には、さまざまな声が飛び交います。それを頼もしく誇らしく感じながら、バトンを受け取った最終走者として、より大きな声を響かせ、本番に向かうのです。
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)