コラム「南風」 トップリーダーの「大変」


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 先代社長が急逝し、私は20代で経営者になりました。何も分からず右往左往し、取引先や先輩経営者に怒られながら、経営というものを教えていただきました。何とか会社を守ろう、借金を返そう、という思いで努力していました。

 「社員とその家族を守らなければならない」ことが経営者の責任であると考え、さまざまな方策を取り入れて実践してきました。しかし、売り上げは伸び悩み、資金繰りに追われる日々。借入金の支払いは延滞し、社員への給与支給が遅れることもありました。お客様からのクレームも重なり、大変な毎日。出口のないトンネルを歩いているようで、悩み、苦しみました。
 そんな時に、何気なく参加したセミナーで耳にすっと入ってきた言葉がありました。「経営環境を嘆いても業績は上がらない」「他人を追及しても効率は上がらない」「困難な結果をつくりだした原因への変革が重要である」「社員教育よりも、“トップリーダーの意識と行動”が会社を変革する」
 自分の経営を振り返って、いろいろと気付かされました。会社で起こっている、さまざまなマイナス面の原因は自分自身にあるのだと受けとめ、反省しました。自分が考え方を変え、積極的に行動するようにしました。すると少しずつですが、業績は回復、取引先も拡大し、なんとか今日まで会社は存続しています。
 大変な日々の中で、ある方から声をかけられました。「大変とは、『大きく変わる』チャンスということですよ」と。その時は理解できませんでしたが、今ならその言葉が実感できます。
 私たちの会社の使命は「沖縄の食文化を通じて、世界中の人に喜びと感動を与えること」だと思っています。沖縄の製造業の未来について熱く語り合える仲間に出会えること、そして再び前向きな「大変」に遭遇するのを楽しみにしています。
(佐久間健治、三倉食品代表取締役社長)