コラム「南風」 癒やしの国


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 仕事の仲間ら約20人で3月19日からタイを訪ねた。タイは乾季が過ぎ暑季であった。タイでは合掌してほほえみ、軽く会釈し挨拶する。気持ちが良い。アジアの国の中で西洋列強の植民地にならなかったのはタイと日本だけだ。皇室とタイ王室との親交もあり、親日的な国である。

 タイの日本人といえば、山田長政。山田は静岡の出身で、タイの王様に引き立てられ、日本の侍を率いタイを救った英雄として、広大な敷地の記念館で顕彰されている。その中に、琉球との交易の歴史も展示されていた。沖縄の泡盛とタイ米、甕(かめ)もタイから伝来したものである。タイ料理は甘辛く、とてもおいしかった。特にトムヤンクン(エビ入り辛味スープ)、カニカレー炒め、グリーンカレーは絶品であった。そして有名なカリプソ・キャバレーのニューハーフショー。皆大満足であった。
 近年、人生は一度限りだという観念で刹那的な生き方をする傾向が多々見られる。しかし、仏教国タイでは人生は一度きりでなく、輪廻(りんね)転生、次の世(生)のために現世で功徳を積むという。目から鱗(うろこ)である。
 旅行の手配をしてくれた饗庭君は以前東京で仕事に疲れ、タイ国内を回ったという。その時、列車の中から見掛けたココヤシの木陰で囲碁をしていた人達が、饗庭君が戻った約5時間後も同じ場所で囲碁をしていた。その姿に、あくせくしていた気持ちがすっかり癒やされ、タイにはまったとのこと。東京で働いている人が金曜の夕方にスーツ姿で沖縄に来て、沖縄の空気とオリオンビール、泡盛、沖縄料理で癒やされて元気になり、また日曜の夜に東京に戻っていくのと似ている。
 私達は、モンスーン気候のほほえみの国、タイに身も心も癒やされた。皆また近いうち、チェンマイやプーケットなどを訪ねたいと口々に話している。
(宮城和博、弁護士)