コラム「南風」 「生活困窮者自立支援法」


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 あまりニュースになりませんでしたが、今月から生活困窮者自立支援法が施行されました。この新法のねらいは、生活に困窮している方に対し、生活保護に至る前の段階で包括的かつ継続的な支援を行うことにあります。

 制度を創設しても、それが機能しなければ意味がありません。新制度の鍵となるのが、対象者の早期把握や支援のための「地域のつながり」です。すなわち、行政、福祉・教育・医療・金融などの各機関、自治会や民生委員、そしてライフライン事業者などが広く連携を図り支援につなげることが重要になります。
 こうした地域のつながりは全国的には希薄になっていますが、沖縄では地域の活動や行事を通じて今なお強固であり、また「ゆいまーる」の精神も息づいています。加えて県内には、多くの支援機関が精力的に活動をしています。中でも、県内2カ所にある国と県との一体的施設である「グッジョブセンターおきなわ」は、生活相談から職業紹介までをワンストップで行う全国でも数少ない施設です。
 こうした沖縄の厚い土壌をいかに活用するかが、新制度の成否にかかっていると言えます。そして、この制度をきっかけに新たな関係が構築され、地域のつながりがさらに深まることも期待されます。
 新たな制度では、生活に困窮している方の状況に応じた就労支援の枠組みが創設されました。すでにハローワークでは、自治体との連携により、生活保護受給者の就労支援で実績を上げています。新制度でも、その経験を十分に活(い)かしていきたいと思います。
 上江田紫寿江さんは、沖縄の若年者支援に早期から、そして長年にわたり多大な貢献をされた方でした。若年者施策の重要さを教えていただいたことを思い出します。心より哀悼の意を表します。
(國代尚章、沖縄労働局職業安定部長)