コラム「南風」 インディー・ジョーンズ?


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 私が学んでいる考古学は机に向かうだけではなく、野外に出て発掘調査を行うことが必須である。人類の行動範囲は極めて広いため、発掘対象となる遺跡は地球上のいたるところに残されている。しかし、過去の人類にとって活動しやすかった場所は現在でも同様で、引き続き生活の場となっていることが多い。このこともあり、調査対象となる遺跡は現代人の住む街中から比較的外れたところが選ばれやすい。

 結果として、発掘現場は太陽が照りつける海岸砂丘のこともあれば、氷が張りそうな冷たい湿地、あるいは石灰岩洞窟の狭い隙間、寒風吹きすさぶ丘の上だったりする。私の場合は、これに海底までが加わる。
 野外調査にはこれに適した道具と服装が欠かせない。夏でも長袖、長ズボンはもちろんのこと、帽子、サングラス、首に掛けたタオル、時にはつま先に鉄板が入った安全靴にヘルメットという姿になる。一見すると、工事現場の作業員さんと見分けがつかない。
 そんないでたちで、食堂やコンビニに立ち寄ると、会社員や観光客の皆さんからは、何となく場違いな人たちという思いのこもった眼差(まなざ)しをいただく。また、同じような格好をしているはずの作業員の皆さんからは、やはりどこか違うのか、訝(いぶか)しげな視線を受けることも多い。このような経験をすると、「人は見かけではなく、中身だ」と言いながら、やはり「見た目」が大きな印象を与えていることにあらためて気付かされる。
 ならば、考古学研究者の場合には、映画「インディー・ジョーンズ」の影響が極めて甚大である。ハリソン・フォードにはなれなくても、テンガロンハットとムチを持って歩けば、みんなきっと考古学者と認めてくれるに違いない。
 でも、僕は寅(とら)さんの格好も好きだけどなあ?
(池田栄史(いけだよしふみ)、琉球大学教授 考古学)