コラム「南風」 定期健診 受けてますか?


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 木でできている弦楽器。健康的な音を奏でるためには定期的な調整が必要です。人間の定期健診のようなもの。

 弦楽器は弦以外は木で作られているので、湿気が多いと膨張するし、乾燥すると縮みます。調整しないでほっておくと、機嫌が悪くなり…思い通りの音が出にくくなる、つまり楽器の体調が悪くなるのです。そのために信用できる腕の良いお医者さん(職人)は必須です。腕の良いお医者さんの手にかかると、まぁ~不思議。まるで魔法でも使ったの?と思わせるほど楽器が生まれ変わります。
 たとえば、魂柱(こんちゅう)は表板の振動を裏板に伝える直径1センチほどの丸い棒ですが、その魂柱を0・1ミリ、コンコンと動かすだけでも随分音は変わります。また駒も然(しか)り。職人がコンと軽くたたくだけで、あら不思議!息を吹き返したかのように生き生きと甦(よみがえ)ります。
 楽器のあらゆる接着部分はニカワを使用しています。保存状態が悪いと接着部分がハガレてしまいます。ハガレ、ワレなどは重症、即入院です。
 弓の毛も消耗品です。弓の毛はご存じの通り、馬の尻尾の毛ですが、その毛を半年に1度くらいのペースで毛替えします。人の髪の毛は、キューティクルが整っていたほうが艶(つや)があり綺麗(きれい)ですね。
 弓の毛に関しては逆です。毛替えしたての毛はひっかかり(枝毛のような?)がほどよくあって、弾力やキメの細やかさもあり、扱いやすくなります。キューティクルが整ってくると毛替えの時期、という感じです。
 さて、沖縄はこれから湿度100%?と思うほどのジメジメ梅雨の季節に入ります。弦楽器にとって1年で一番体調が悪くなりやすい季節。医者ではない私が言うのも何ですが…悪くなる前に、人も楽器も定期健診はぜひ受診しましょう!
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)