コラム「南風」 「積ん読」解消週間


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ゴールデンウィークが終わりました。日頃「積ん読」を重ねている私ですが、久しぶりに本とじっくり向き合う時間がとれました。

 はじめに手に取ったのが、佐々木敏「栄養データはこう読む!」(女子栄養大学出版部)です。「根拠に基づく栄養学」を提唱する著者は、あぶら、食塩、アルコールなどと健康との関係について、豊富なデータやエピソードとともに分かりやすく解説してくれます。
 折しも、18歳以上の1日の食塩摂取量の基準を男性8グラム未満、女性7グラム未満とする国の食事摂取基準の改正があったところです。栄養について正しい知識を持ち、食習慣を見直すことの大切さについて改めて考えさせられました。
 習慣の大切さに関連して、チャールズ・デュヒッグ「習慣の力」(講談社)では、人間行動の4割以上が無意識の習慣から成るという研究結果を紹介し、意識的に「良い習慣」を増やすことで生活の改善につなげることを提唱しています。
 興味深いのは、習慣を変えることにより個人レベルで改善が図られた事例だけでなく、企業や組織が成功した事例も取り上げていることです。組織論としても面白いと思います。
 久しぶりに読み返した本もありました。四方田犬彦「モロッコ流謫(るたく)」(新潮社)は、港町タンジェを起点にモロッコの邑(まち)を巡る壮大な紀行文です。旅の途中、著者は作家ポール・ボウルズなど彼の地に魅せられた人々に思いを馳(は)せ、その人生や文学を論じます。
 終始冷静な記述の中にも、現地の人々との濃密な交流や、歴史や宗教などへの深い洞察を通じて、モロッコという国の奥深さが十二分に伝わってきます。
 そういえば、私も学生時代にその本を読み、いつか愛川欽也「さよならモロッコ」を見て旅に出たいと思ったのですが、まだその夢はかなえられていません。
(國代尚章、沖縄労働局職業安定部長)