コラム「南風」 「カフ」が下がる時


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 「今日はこの辺で失礼します」と会釈。キャスター二人のマイクがオフになり、エンディング曲が大きくなる。俯瞰(ふかん)のカメラがゆっくりと動き、スタジオの二人が遠のく…。「あの瞬間、キャスター同士で何を話しているんですか」。先日、ひーぷーことタレントの真栄平仁さんに聞かれました。

 ニューススタジオのキャスター席には「カフボックス」というマイクをオン・オフにする機械があります。カフ(cough)=咳(せき)という名の通り、キャスター自身が咳払いなどを手元でカットすることが目的で、私たちは手元のレバーを上げたり下げたりして放送に臨みます。
 しかし実際は咳払いのためにカフを下げることは、ほとんどありません。VTRでインタビューの音声が流れる時、キャスターはすかさずレバーを下げます。わずか10数秒の間に「原稿、差し替え!」「項目、入れ替わり!」「私がコマーシャルふります!」と、フロアディレクターやサブ調整室とやりとりをしています。そして再びレバーを上げて、次の文章を読みます。
 生放送の中で、カフのオン・オフによって、キャスターの音声は、舞台の表と裏を行ったり来たりしているのです。
 ひーぷーさんから質問された、エンディングでカフを下ろす時は、最もほっとする瞬間。「リポートお疲れ様です」「フォローしてくれてありがとう」と、素直な言葉を話しているような気がします。
 ちなみに、「明日は何の日?」というコーナーで、「記録を更新する大きなハブが見つかった日」という話題をお届けした時のこと。「ハブに遭遇したらどうしますか」という私の質問に対し、佐久本キャスターは「決して目をそらさず、後ろへ下がります」とまさかの珍回答。カフを下ろした直後の私の一言は「それはクマでしょ!」でした。
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)