コラム「南風」 第二の故郷 鳥取・倉吉


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 鳥取県の中部にある倉吉市は妻の故郷である。天女伝説で有名な打吹山(うつぶきやま)を登るのが好きだ。原生林に覆われた緑の山道を登ると、頂上から倉吉の町が一望できる。空を飛ぶトンビに乗ったつもりで町を見ると、打吹山を背に中央を玉川が流れている。古くは城下町として栄え、玉川に沿って赤瓦と白壁土蔵群、商家の町並みが広がる景観が美しい。玉川は以前はドブ川だったが、地域の皆できれいにし、今では川草が茂り、コイなどが生息し、それらを啄(ついば)む白サギなどが飛来し、優雅な風景である。

 北には日本海、東には日本屈指の鳥取砂丘を望み、近くにはラジウムの三朝(みささ)温泉と神秘的な三徳山の国宝投入堂が見える。そして西には伯耆(ほうき)富士大山(だいせん)が望める。また倉吉は第53代横綱・琴櫻の出身地で、二十世紀梨、公園ダンゴが名物である。素晴らしい木工品、陶磁器の民芸の町でもある。
 海の幸はノドグロ、カニなどがうまい。夏の岩ガキも絶品である。山の幸は山菜がいい。ゴールデンウイークには皆で谷川に出掛け、アユの塩焼きや山菜の天ぷらなどを楽しむ。あるとき私と娘が少し遅れて合流したところ、ツバキの天ぷらが出た。おいしいと勧められて父子でかぶりついた。そしたら皆がドッと大笑い。地元でも、ツバキはなかなか食べないとのこと。ちょっと遊ばれたのであった。
 倉吉では、よく散歩に出掛ける。川の土手には赤い彼岸花やツツジが咲き乱れる。空にはトンビがヒューヒュー、くるくると空を舞い、いかにも日本の典型的な田舎の風景でとても落ち着く。そして散歩から帰ると、親戚の持ち回りで連日酒盛りである。女性陣自慢の海の幸、山の幸の手料理をご馳走になり、男性陣からは自慢の地酒が振る舞われる。「婿殿、婿殿」と下にも置かぬもてなし。だから僕は倉吉が好きなのだな。
(宮城和博、弁護士)