コラム「南風」 中継でお伝えします


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 突然振り出した雨。街に溢(あふ)れる人々。カメラの前で、私は頭が真っ白になりました。世界のウチナーンチュ大会で行われたパレードを、生中継した日のこと。本番が迫る中、出演していただくはずのブラジル在住の男性が姿を見せません。何とか連絡が取れて、打ち合わせもないままインタビューを終えましたが、パレードの高揚感どころか、私の慌てた様子がただ露呈するリポートでした。

 生中継に臨む姿勢が甘かったと反省しました。失敗の原因は、私が台本の暗記や段取りのことで頭がいっぱいで、その場の空気を伝えられなかったこと。県系人が喜びを分かつ瞬間を肌で感じ、その場で見聞きしたことを自分の言葉でまとめていたなら、台本の暗記なんて必要ないのです。もう一つは、地球の反対側からはるばる来沖された、80代のゲストへの思いやりが欠けていたこと。ご高齢にも関わらず長い旅を経て故郷を訪れた想いに、もっと寄り添えていたなら、打ち合わせがなくてもインタビューは成功したはずです。
 設備が揃(そろ)ったスタジオと違い、生中継にはさまざまな制約があります。中継地点からカメラは何を映すことができるのか、ケーブルは届くか、音声や明るさは大丈夫か。リポーターは取材したあと、本番ぎりぎりまでリハーサルを繰り返します。どれだけ経験を重ねても緊張が伴う生中継ですが、最近はインタビューだけは、できるだけリハーサルをしないようにしています。それは「生」の醍醐味(だいごみ)が薄れてしまうから。こちらがしっかり準備をして、ゲストにはリラックスして本番に臨んでいただけるよう心掛けています。
 現場と視聴者が同じ時間を共有できることが、生中継の大きな魅力。リポーターはそれぞれの場所をつなぐホスト役です。皆さま、どうぞ生中継をお楽しみくださいませ。
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)