コラム「南風」 ドキドキ・ワクワク音楽祭


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 今からおよそ35年前、沖縄で素晴らしいミュージックキャンプ(音楽祭)がありました。もちろんテントを張ったりキャンプファイヤーしたり…のキャンプではありませんよ。20年ほど続いた、「ドキドキ・ワクワク」の大イベント。それは、世界中から著名な音楽家たちが「沖縄」という小さな島に集まって、さらにオーディションで選抜された受講者が講師陣と寝食をともにしながら、室内楽を学べる場です。

 後で聞いた話だと、沖縄に惹(ひ)かれてやってくる演奏家も少なくなかったとか。バカンスを兼ねて家族で来た人も。そういう演奏家のプライベートな部分が垣間見えたのも、このキャンプの特徴のひとつだったのでしょう。今、国内外で活躍している演奏家は、皆このキャンプ出身者といっても過言ではないはず。
 キャンプ中はホテルの部屋がレッスン室に変わり、レッスンを身近に聴講することができました。英語が飛び交うレッスンは言葉が分からなくても、若い私は多いに刺激を受けました。最後の年のキャンプにはついに受講生として参加させて頂(いただ)いたことは、私の音楽の栄養となっています。
 キャンプ中のお楽しみは、受講生によるモーニングコンサート。日替わりプログラムで、そこで出合った曲も数知れず。そしてクライマックスは、世界中から集まった豪華な顔ぶれの講師陣による、室内楽コンサート。観客は上質な演奏を楽しむことができました。今、思い出しても大興奮です!
 その頃に比べると、最近は演奏会の数が格段に多くなり、行きたいコンサートを選べる時代になりました。今、演奏家となった私が目指すもの…。あの頃、私が経験した「ドキドキ・ワクワク」感が味わえる演奏会を少しずつ、確実に開催していくことだと思っています。
(新垣伊津子、ヴィオラ奏者)