コラム「南風」 最終面接のちあきなおみ


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 採用試験のシーズンです。沖縄テレビでも募集が始まり、コマーシャルの間に採用情報が放送されています。15秒の映像に、若手社員がはつらつと働いている様子もちりばめられていて誇らしく感じます。

 私は大学卒業後、東京のレコード会社に勤めていましたが、OTVの募集要項を見つけて一念発起。東京・沖縄を行ったり来たりして、慌ただしく採用試験を受けました。書類選考、一次面接、筆記試験、カメラテストをパスし、いよいよ最終面接を迎えた日。志望動機、自己PRは面接の基本。「どんなアナウンサーになりたいか」「家を出て局に来るまで最も気になったことは何か」と、定番の質問が続きました。
 しかし最後にまったく予想していなかった注文がありました。「勤めているレコード会社の所属歌手で一番好きな人の歌、歌ってください」。目の前には背広姿の気難しそうな役員がずらり。一体何を歌えばいいのか…。
 とっさに私の脳裏に浮かんだのは、氷川きよし、木村カエラ、一青窈(ひととよう)といった売れっ子ではなく、生きる伝説・ちあきなおみの「喝采」だったのです。恐る恐る歌い始めましたが、「あれは3年前~」あたりから緊張が吹っ切れて、最後はまさに拍手喝采を浴びる気分になり、深々とお辞儀をして役員室を後にしました。
 この「喝采」が後押ししたのかどうかは分かりませんが、晴れて内定をもらった私。父にそのことを話すと、「この歌は金城家のサクセスソングにしよう。ちあきなおみに感謝だ」と目を輝かせていました。
 実は私…、ちあきなおみさんの歌唱をリアルタイムで見たことはありません。所属レーベルでも、もはや伝説の存在。ではなぜ「喝采」を知ってたかって? バラエティー番組のコロッケさんのものまねで覚えたものなんです!
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)