コラム「南風」 平和学習に求められること


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 糸数アブチラガマの入壕の際に時々、ヘルメットの着用を拒む生徒がいます。案内する側にとっても安全は絶対の条件で、ルールを守って体験してもらわなくてはいけません。また暗いガマの中では教師との連携が不可欠で、移動の際は生徒の誘導もお願いします。

 ガマの中で、生徒たちが自分の足で立ち、考える貴重な機会に、ガイドは立ち会います。暗い中では一人一人の表情が不思議とよく見え、また暗いからこそ、見えてくることもあります。だからこそ、子どもたちに分かりやすく伝え、想像させ、考えるきっかけをつくることにガイドは努めなければならないのです。
 しかし、「心無い言葉」や暴言を吐いたり、ガマの中で口笛を吹く子らがいるのも現実です。そのような場合も、ガイドは最後まであきらめず、子どもたちに正しいことを促し、間違っていることを「さとす」ことが必要だと思っています。1時間の案内ですが、ガイドは真剣に向き合っているのです。
 平和学習の取り組みも、体験後の表情もさまざまですが、ガイドの説明以上にガマの暗闇やしずくの音、空気感などから、子どもたちなりに何かを得ています。見送りの時、「今度は家族と一緒に来るよ」の生徒の声に、励まされることもあります。
 日々のガイドでつくづく思うことは、事前学習の大切さです。平和学習で一番重要なことは、子供たちに何を伝えたいか、学ばせたいかという意識をまず大人たちが持つこと。戦死者の数や「戦争の悲惨さ」だけでなく、一人一人が自分のこととして考えて初めて意味があります。私たち大人や教師の役割は、考える機会と助言を与えることではないでしょうか。岐路に立たされた時私は、「悪い人はいない」と常々語っていた父の教えに立ち戻り、それを心の支えとしています。
(當山菊子、糸数アブチラガマ専属ガイドゆうなの会責任者)