コラム「南風」 言葉を届ける


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 コラムを執筆するようになってから、読者の方からお手紙をいただくようになり、印象的な手紙が2通ありました。長い手紙は県外の方から。旅行で沖縄に滞在し、ホテルで新聞をご覧いただいたようです。そしてもう一つの短い手紙には、力を振り絞るように書いた文字が並んでいました。お体を思うように動かせないのだと察しました。

 私は放送を通して、映像と音声を使って伝達する生業ですが、活字で自らを表現し、旅の途中の方に、また病に伏す方の暮らしに言葉を届けることができたと知り、心が震えました。
 初回コラムのタイトルは「キンチョーアナ」。私は毎日緊張しながらカメラに向かい、悪夢まで見るほどです。こんな小心者に追い打ちをかけるコラムの締め切り! 半年間、寝ても覚めてもネタを探し、メモを取り、文章を組み立てていたように思います。話し言葉とは違う、活字で伝わりやすい工夫をするため、頭をひねる毎日でした。
 高校生の時、私は文集に「心をつなぐ記号」と題した作文を寄せました。言葉は儚(はかな)く、記号にすぎない。でも感情や考えを取り出して、相手に渡すことはできない。だから試行錯誤しながら、最も自分の心に当てはまる言葉を選び、伝えていきたい。そうつづりました。10代のころに言葉に興味を抱いた私は、いまアナウンサーとして働いています。言葉を届ける仕事は喜びも大きいですが、苦さを舐(な)めることもあります。しかしだからこそ、やりがいがあるのだと、あらためて感じるきっかけを「南風」は与えてくれました。
 8面に立ち止まってくださった読者の皆さま、ありがとうございました。いつかまた紙面でお会いできる日を楽しみにしています。
 言葉への興味を育んでくれた母校を思って―。
「言の葉の 茂る白比森(シラヒムイ) 南風吹きぬ」
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)