コラム「南風」 ―明日へ―


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 今日(執筆時)、37歳の誕生日を迎える。ベトナムに住みだしたのは29になったばかりの夏だったから、あれからもうすぐ8年が経(た)とうとしている。
 当初は毎日が新鮮で、あらゆるものに驚きを感じていた。それがいつしか、日常と化し、慣れるにつれ、その新鮮さや驚きは薄れ、最近では気にも留(と)めなくなっていた。

 そんな折、「ベトナムについて書いてみては」というお話をいただいた。日々の生活に追われ、ベトナムの何が特別なのか、なぜ私はここにいるのか、それすら分からなくなりつつあった私は、今回あらためて、日本とベトナム、そして自分がここにいる理由(わけ)を多少なりとも見つめ直すことができたように思う。
 「中華帝国の支配を経験した沖縄とベトナム」、「日本とベトナムの社会比較からみる『貧困』の意味」、「蔓延(まんえん)するベトナムの国家的社会問題」など、書き出してみると書きたいことは山ほどあった。しかしながら、日ごろの勉強不足、好奇心・探求心の減衰からか、書けないことも多かった。まだまだ知らない側面が多いこと、書けない事象を再認識し、忘れかけていた初心を思い起こす貴重な機会であった。
 図らずも、10年前のこの時期に、父も「南風」の執筆者のひとりであった。彼は、今もなお私の師であり、常に知的刺激の源であり続ける。母は、いつも私の駄文の最初の読者であり、一番の理解者である。この拙(つたな)いつぶやきをもって、2015年前半期の南風を締めくくるのは少々心苦しくもあるが、読んでくださった読者の皆さん、アドバイスやコメントをくださった多くの知人や友人、遅れがちな原稿を辛抱強く待ってくださった本欄担当の方々に、厚くお礼申し上げたい。「Xin cam o’n(シンカモン)!」ありがとうございました。
(金城れい子、民間企業ベトナム事務所勤務)

※注:Xin cam o’nの「a」はアキュート・アクセント