コラム「南風」 理系のゼネラリスト


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 昨年末発表されたアメリカのギャラップ社調査で、「信頼でき、倫理規範の高い」職業の2位は薬剤師でした。一方、日本においては、今年5月の人気職業ランキングで「憧れの職業」13位(13歳のハローワーク公式サイト)と上位に入り、うれしく思いました。

アメリカで看護師に次いで2位というのは、日本と違う保険・医療制度が要因にあるのだろうと思います。
 さて「薬剤師」と言えば、薬局や病院で調剤・販売しているイメージが強いのではないでしょうか。実は他にも製薬会社での医薬情報担当者や、医薬品・医療機器などの研究開発、化粧品会社などにも勤務しています。行政では麻薬取締官をはじめ、薬事監視(薬局などの許認可、薬物乱用防止、危険ドラッグなど)、食品衛生監視(屋台や飲食店などの許認可など)、環境衛生監視(理・美容、クリーニング、ホテル、公衆浴場、墓地など)、衛生環境研究所での試験研究―と、多種多様な分野で専門家として指導、助言しています。最近では「うっかりドーピング」の防止にスポーツファーマシストとして、健全なスポーツの発展にも貢献しています。
 また、学校薬剤師をご存じでしょうか。飲料水やプールなどの水質、アレルギー原因物質、食中毒などの衛生管理、飲酒・喫煙防止、薬物乱用防止、さらには薬の適正使用など、子供たちの健康相談、保健指導などにも関わっています。
 このように薬だけでなく、化学物質のあるところ全てに薬剤師は広く関わっています。それは薬剤師法第1条の「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及(およ)び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」に基づいています。つまり薬剤師は守備範囲の広い、理系のゼネラリストともいえるでしょう。
(吉田洋史、沖縄県薬剤師会理事)