コラム「南風」 福祉のおしごと


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 保育や福祉職を目指す実習生や、学生ボランティアに「卒業後の進路は」と尋ねると、よく返ってくる言葉が「いろんな経験をして、3年後ぐらいに仕事につきたい」。少しばかり、がっかりしてしまう言葉だ。これでは資格のための実践なのか、実践のための資格なのか分からない。

 福祉の現場は、いまでも人材不足のために提供できないサービスがある。「障がい」は多種多様であるのに対し、資格習得の講座では必ずしも、十分な知識と理解を得ることは難しいからだ。このため現場に入って力を発揮する前に、疲れ切ってしまう職員が多い。「大変さ」は基礎的な知識の不十分さが原因のはずなのに、「福祉の仕事」だからと強調されている気がする。
 特に児童分野のサービスは、「子どもたちの未来に想いを乗せたい」と、気持ちの強さで開設された事業所が多い。それゆえに現場でのジレンマはつのるばかり。人材不足による負担と職員育成のエネルギーは、現場職員のエネルギーまで吸い取ってしまうようだ。
 若者の職業観も変化している。以前は、人気の職業と言えば「保育士」「看護師」「先生」などが上位を占めていたが、今では、5位以下になっていると言われる。また職業選択でも最近は、勤務終了後の「余暇時間」に重点が置かれているそうだ。
 「目標が漠然としたまま、何となく仕事に就く」。その結果、すぐに「挫折」してしまう。でもそれは、本当の挫折だろうか。簡単に諦めてしまっていないだろうか。中には、磨けば光る「原石」のような学生もいる。自分の「原石」に気づかない、もったいない学生だ。
 さて冒頭の「3年間」は、どんな下積みをするつもりだろう。「なんくるないさー」も、その下積みの結果に「希望」をのせる言葉ではないのだろうか。
(名幸啓子、障害児サポートハウスohana代表理事)