コラム「南風」 5年ぶりの映画監督

 「やぎの冒険」という映画が5年前、沖縄で制作された。監督を務めたのは当時13歳の僕自身だ。
 あの時、心の動くままに映像を撮り、そして繋(つな)げ、全力で制作した「やぎの冒険」は、大人のスタッフにより「食育映画」という、胡散(うさん)臭いネーミングをつけられ、全国そして海外へと発信された。

「食育」をテーマにしようなんて、制作当時考えてもいなかった。ただ僕は、ヤギを食べるという沖縄の食文化を描きたかっただけだ。だからこそ、「これは食育映画ではない」という批判的な意見を言われた時には、思春期の中学生ながらに反発したい気持ちを心の奥に溜(た)めていたりしたものだった。
 そんな僕も19歳になり、大学進学のため上京して1年以上の月日が流れた。そして今、「やぎの冒険」東京公開の際にプロデューサーに手をひかれ挨拶(あいさつ)に行った場所や人々に、一人訪問する日々を送っている。そう、僕は去年、再び5年ぶりに映画を撮ったのだ。しかし今回は「やぎの冒険」のような商業映画ではなく、スタッフは全員大学生の自主制作映画だ。タイトルは「人魚に会える日。」。人魚伝説のモデルであるジュゴンを題材とした物語だ。
 実は、この作品は「やぎの冒険」公開前から構想を練っていた作品だ。この作品には僕の沖縄に対するあらゆる想いが詰まっている。ことし3月に完成して以来、来年の公開に向けて、劇場と上映の交渉をしたり、公開するための資金を集めたり、「やぎの冒険」で大人のスタッフが「食育映画」と打ち出したような、「どうすればこの作品が多くの人に見てもらえるか」といった作品の興行活動について、模索し続けている。
 今回は、そんな最新作の「人魚に会える日。」の制作裏話や、僕にとっての映画制作について届けていきたい。
(仲村颯悟、映画監督)