コラム「南風」 魂の教育


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 少年院のカリキュラムは、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導などの領域に分類される。

 生活指導は、要はしつけ教育である。あいさつをする、掃除をする、時間を守る、人の話を聴く、敬語を使うなど、社会生活で必要なことをきっちりと身に付けさせていく。
 職業指導は、仕事に関する教育である。多くの少年が進路として就職を希望することから、社会人としての心構えを身に付けさせるのはもちろんのこと、就労に必要な資格も積極的に取得させていく。
 教科指導は、基礎学力向上のための教育である。僕のように、中学校もろくに通っていなかった少年がほとんどであるため、読み書き、計算などを小学校低学年のレベルからでも丁寧に教え込んでいく。
 体育指導は、基礎体力向上のための教育である。酒を飲み、煙草(たばこ)を吸い、時にドラッグ漬けになっていた少年たちは、身体能力が衰えているため、昼の世界で通用し得る強靭(きょうじん)な体づくりを進めていく。
 このように多様なカリキュラムが存在する中、その根底にあるものとして僕自身が最も大切に考えているのが、少年たちの「魂の教育」である。
 法務教官は、24時間体制で少年院に勤務する。あるときは勉強を教えながら、あるときは一緒に運動をしながら、あるときは一緒に作業をしながら、あるときは一緒に行事の準備をしながら、あるときはカウンセリングをしながら、約1年の収容期間を少年と共に生活し、笑ったり、怒ったり、泣いたり、落ち込んだり、励まし合ったりしながら、己の全人格を武器に少年の魂を感化していく。
 僕にとって「教育」とは「共育」にほかならない。互いに寄り添い、共に魂を磨き、育ち合う。法務教官という生き方を選択するとは、そういうことだ。
(武藤杜夫、法務省沖縄少年院法務教官)