コラム「南風」 グリーフケアの活動


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 「親を亡くすと過去を失い、伴侶を亡くすと現在を失い、子どもを亡くすと未来を失う」とよくいわれる。グリーフワークおきなわ(GWO)の始まりは、2000年から10年間活動していた市民団体「ホスピスを考える会」にある。

ホスピスを啓発するために設けられたいくつかの講座のひとつに「グリーフ(死別悲嘆)ケア」があり、そこに集った有志でGWOを立ち上げた。
 初めて講座を行った13年前、「グリーフ」という言葉を知る人はごくわずかだった。終末期(ターミナル)や緩和ケアに関心を持つ医療従事者を含めても受講者のほとんどが、「グリーフケア」の必要性を初めて認識した。
 スタッフは現在、牧師、僧侶、看護師、心理士、カウンセラー、また一般の方が、ボランティアで活動している。賛助会員には医療機関や葬儀社が入会し、配布資料や会報の印刷・発行などの協力がある。特に設立時からの活動拠点として、西原町のアドベンチストメディカルセンターには大変お世話になっている。
 半年に1度はイベントを開く。グリーフケアの分野において活躍中の著名人による講義、愛する人を亡くした当事者を招いての体験談、自主企画としてのグリーフワークの数々も紹介する。医療や介護関係の方々向けにも開催してきた。今後はさらに幅広く一般への理解を深めていきたい。
 行政の手が及ばない領域の福祉的な活動は、なかなか理解されにくく、広報活動も大変難しい。グリーフという、表に出にくい、そしてごく少数の人々の、さらに一時的な苦悩に対応するには、デリケートでセンシティブな課題がつきまとう。
 GWOはこれからも、グリーフにある人の気持ちや立場を察し、敬いつつ、その人がいずれ立ち上がり自分らしく生きていけることを信じてサポートしていく。
(関谷綾子、グリーフワークおきなわ)