コラム「南風」 始まりは「小琉球」

 ある日、復元された石のアーチ門をくぐり抜けながら何となく違和感を覚えた。引き返してよく見ると、切り出された50センチ四方の石は天地が逆に据えられていた。実に見事な逆転である。年期を積んだプロの石工なら、石目をしっかり判断したはずだ。最近はあちこちでグスクの復元が進んでいる。その見事な石垣群には石灰岩が使用されている。

だが石灰岩は孔(あな)だらけで、大気中のゴミを吸い込み、たちまち真っ黒くなるのが欠点である。
 その石灰岩なる石は、かつてのサンゴ礁が隆起し、時間の経過とともに再結晶作用を受けたもので、沖縄県を代表する石だといってもよい。専門用語では、琉球石灰岩という。この石灰岩が最初に発見され学問的な意義が認められたのは1925年である。台湾本島の南沖合の小島「小琉球」に分布する地層にこの名がつけられた。観光では、台湾唯一のサンゴ礁の島として宣伝されている。それと石の顔つきや形成年代が類似する沖縄のものに対しても、そう呼ばれるようになったのである。現地へ行ってみると、ここは沖縄の南部かと錯覚する光景であった。
 ところで、沖縄にも多くの種類の石がある。一目見ただけで、おおよその場所も特定できると自負している。しかし、シルクロードでは違った。天山山脈の近くを歩いたとき、己の自負は見事に打ち砕かれる思いがした。延々と広がる小礫(れき)からなる砂漠に立ち、拾い集めた石を見た。どれ一つとして今までに見たことがない石ばかりだ。色とりどりの印象だけで、頭の中の岩石分類表は役立たずであった。「私は、今まで何を学んだのか」と。
 天山山脈は、4~5億年前の地層からなる石である。しかも内陸深くにあり、形成過程も複雑だ。きっと石にもメンツがあるのだろう。「そう簡単にいくものか」という。
(大城逸朗、おきなわ石の会会長)



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