コラム「南風」 声に宿る魂


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 私は腹式呼吸で声を出しています。簡単に言うと「腹」を使って息をして、お腹(なか)から声を出すわけですが、理由は二つあります。長時間安定的に声を出すため。そして、私たちのお腹から出す声は魂の叫びだからです。ん? お腹からの声が魂の叫び? と思われるかもしれません。

 昭和初期、ドイツの哲学者デュルクハイムは「肚(はら)人間の重心」という本の中で日本人の魂は肚(腹)に宿っていると主張。それを「腰腹文化」と表現したそうです。私たちが使う「腹がたつ」「腹をくくる」「腰が低い」という表現が心の状態を言い表していることを考えれば、納得できるのではないでしょうか。では腹とはどこか、それは、へそより指下三本の「丹田」なのだそうです。
 実はその丹田、腹式呼吸をする上で最も重要な箇所で、腹式呼吸はこの丹田を基準として、背中までを含めたお腹まわりを空気ポンプに見立てて呼吸をし、声を出します。丹田を使って息をし、声を発するのですから、それは当然魂の叫びです。だからこそ、きちんと腹から声が出ていれば相手に伝わるのだと思います。
 では、魂とは何か。私は自分自身がどう在りたいか、どんな価値観を持ち、どんなビジョンを持っているのかと、常に自問自答を繰り返す心だと考えています。そんな心の鍛錬が、あるべき自分と、あるがままの自分が一致した自己一致の状態を形成し、魂になります。そしてそれが声ににじみ出るのだと信じています。精神論でしょ、とお思いでしょうが、私たちの幸福感や充実感に影響を与えているセロトニンという脳内物質は、腸の環境を整えることが必要不可欠だそうです。つまり腸は第2の脳なんです。
 魂の宿った声には、自己一致した強い生命力が宿っています。あなたの声にはどんな魂が宿っていますか。
(大城勝太、エフエム沖縄アナウンサー)