コラム「南風」 石になった生き物


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 宮古島は全域隆起サンゴ礁からなり、かつて完全に海中に没していたことは確かである。島の東に大きな古陸が存在したが、地殻変動で陥没し、その反動で西側の裾礁型リーフが隆起するという一種の「シーソー現象」が起こったのだ。

淡水型のサワガニが現生し、さらに数々の動物化石の出土がそのことを推測させる。
 さて、その宮古島でゾウの化石が発見されている。ゾウはトリロホドン、ゴンフォテリウム、それに時代を異にするトロゴンテリである。前の二種類は、四百万年も前のクチャの地層から出ている。おそらく大陸と陸続きになった島々(陸橋という)を経て南から渡来したものだろう。しかし大陸の揚子江から吐き出され海底に積もった堆積物、即ちクチャの中にはまり込んだことも考えられる。化石は臼歯や肋骨片などである。地史的に考えると、やはり巨大陸地があり、宮古島にゾウが生息していたという方が夢がある。
 トロゴンテリゾウについては、戦時体制が強まり、燐(りん)鉱石を求めて農林省から派遣された技師が1939年、宮古のある洞穴で発見した。この化石は鑑定のため東大から早大へ。さらに翌年、再発掘した学者により新たな化石が発見された。化石は都合2個の臼歯と四肢骨片である。標本は一部欠損や摩耗が激しく、左右の区別や種類の見極めが困難であった。再検討の結果マンモスの仲間の古いタイプに属する種類で、臼歯は左右の上顎第三大臼歯と判明した。最初発見の臼歯化石は東大の資料館に保存されているが、他は不明である。同地点からアメリカの学者がさらなるゾウの化石を発見したという情報を得たが定かではない。種類から判断して、中国北部から渡来したと考えるが、今後「象のきた道」を明らかにするのは若い人に期待したい。私にはもう時間がないから。
(大城逸朗、おきなわ石の会会長)