コラム「南風」 人生の勉強机


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 「千ベロ」という言葉を聞いたことがありますか。千円でべろべろに酔えるような価格帯の酒場のことですが、今この千ベロが沖縄でもブームになり始めています。

 私の趣味は「お酒」。真昼間から飲むのが好きです。以前は、昼間から飲める場所と言えば、お蕎麦(そば)屋さんくらい。そんな私の前に「千ベロ」が出現。早い店は正午からオープン。昼飲み族の救世主です。2、3軒はしごして、さっと切り上げ、帰りはバス。そんな楽しみ方が、リーズナブルな値段でできるようになったのです。
 そして仲間の存在も忘れてはいけません。「月曜昼から飲もう会」と名付けられた会のメンバーは4人。カウンターの隅に2人ずつ腰掛けると、ちょうど都合がよいのです。もちろん、月曜日に開くのも、「週の始めだから飲み過ぎてはいけない」というプレッシャーが自然とかかるから。つまり、程よい量を、美味(おい)しく楽しく、明るいうちから嗜(たしな)みやすい、というのが月曜日というわけです。
 今春はメンバー4人で東京・赤羽を中心に1泊2日の「昼飲み」遠征も果たしました。軽く飲んで、歩いて酔いを覚まし、次の店でまた軽く酔う。時に隣に座った見ず知らずの酔客と他愛もない話で盛り上がる。ゆっくりと、長くほろ酔いをキープし、嗜む。
 ある酒飲みが教えてくれました。「酒は聖なる命の水」であり、「カウンターは人生の神聖な勉強机」だと。カウンターに立つ人は人生の先生で、座る人は生徒。だから生徒である客は幾ばくかの金を置いて帰るのだと。
 お決まりのカウンターの隅に座り、ふらっ~と現れる常連同士で何気ない会話を楽しむ。そこから次の仕事が生まれることもある。だから今日も私はいい机を探して、酒場へ向かうのです。
(大城勝太、エフエム沖縄アナウンサー)