コラム「南風」 まず撮ってみよう


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 「僕も映画監督になりたいんです」と、たまに声をかけられる。映画監督になりたいのなら、映画を撮ればいい。映画監督になるのに資格は一切必要ない。映画を撮ればそれで監督だ。海外に視野を広げれば、自主制作で映画を撮っている子どもたちは多く存在する。

「やぎの冒険」のときに訪れた香港の映画祭では、15歳の子が制作した映画が出品されていた。日本で映画を制作している子どもが少ないのは、おそらく日本の学校で映像教育が少ないのが理由だと思う。しかし、今の時代、スマホで撮影から編集まで行うことが可能だ。それなのに子どもたちが映画をつくらないのは、すごくもったいない。
 僕自身、最初に手にしたカメラは、どこの家にもある普通のホームビデオカメラだ。運動会と学芸会の時しか出番のない、テレビの下に埋もれていたカメラ。それを勝手に持ち出して家の近くの風景を撮っていたのが、映画をつくるきっかけとなった。
 もちろん編集という技術なんて当時あるはずがない。セリフを間違えたらカセットを巻き戻して重ね撮り。音楽を加えたければ、カメラの隣にラジカセを置いて流していた。完成した作品は、家で友達を集めて上映し、少し出来のいい作品は公民館で上映会をして地域の人たちにも見せた。
 振り返ってみれば、小学生の僕が勝手にカメラを持ち出すことを怒らなかった親のおかげで、今になっても映画を撮り続けていられる。逆の立場で考えれば、子どもにカメラを自由に使わせるなんてとても勇気のいることだ。でも僕がそうだったように、ゲーム機を子どもが壊さないように、「遊び道具」は子どもなりに大切に使う。
 これから先、僕なんかよりもっと若い映画監督が、そしてもっと実力のある映画監督が、沖縄から次々と生まれ出てほしい。
(仲村颯悟、映画監督)