コラム「南風」 メンタルヘルスとグリーフ


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 産業保健の仕事をしている。カウンセリングやコンサルティングで、働く人のメンタルヘルスを支援する業務だ。職業人のメンタルダウンのきっかけのひとつに、グリーフ(死別悲嘆)がある。身近な人との死別をきっかけに、心のバランスを崩してしまう人が少なくない。

 愛する人を亡くしても時間は流れる。涙で枕を濡(ぬ)らす夜にも朝がくる。気持ちは重苦しいまま体をひきずり、日常の営みが始まる。何をしても故人を思い出し、集中できなくてミスが増える。誰とも話したくない。食欲はなくなり、夜も眠りにくく、体が重い。このようなうつ状態が長引くと、気力がなくなり体調も優れなくなる。さまざまな手続きや法事が二次的なストレスを生み出す。四十九日が明けるころ、なお悲しみが増すこともあり、心身にかなりの負担がかかる。
 グリーフを抱えつつメンタルヘルスを保つには、以下のことが重要である。まず、悲しみを自由に表現すること。これをグリーフワークという。故人と共通の親しい人らと語らいつつ泣くもよし、感じることを躊躇(ちゅうちょ)せず書きだすもよし。思いの丈をぶつけられる何かに心を傾けよう。
 次に、気持ちを切り替える術(すべ)をもちたい。愛する人を失っても私たちは生きていく。生きるために食べ、食べるために働く。工夫しながら家事や職務に集中できるようになると、それがグリーフの休み時間になる。
 そして最後に自分をケアするための時間をしっかりとることだ。十分に睡眠をとり、ゆっくりおいしいものを食べ、新鮮な空気を吸って、わが身をいたわる。
 私が所属する日本産業カウンセラー協会は、9月10日の自殺予防デーから12日までの3日間、「働く人の電話相談室」を開設する。(電話)0120(583)358、午前10時から午後10時まで。通話・相談料無料。
(関谷綾子、グリーフワークおきなわ)