コラム「南風」 災害時の薬剤師活動


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 東日本大震災では、沖縄の病院・薬局から約30人の薬剤師が現地に入り、被災者救援のために医療支援活動に従事しました。被災地で薬剤師に何ができるのかというと、実は普段の業務と同じことが求められます。

巡回診療に同伴し、被災者から飲んでいた薬を聞き取り、効能や包装容器の色、薬の形、文字・数字などから、薬を鑑別します。同じ薬の在庫がない場合には、同種・同効薬の代替薬を提案します。
 患者さんへの薬の説明は、もちろん本領発揮です。それに加えて、避難所での便秘や下痢、咳(せき)や風邪、打撲や擦(す)り傷といった軽医療へは、一般用医薬品の提供や健康相談で対応。そしてトイレの衛生管理、ハエや蚊、ダニといった衛生害虫などの防虫駆除、手洗い・うがいなど清潔を保つための啓発なども、薬剤師が担いました。
 医師や看護師とは別の観点を持つことに意義があります。「そのとき薬剤師は医療チームの要になった」とメディアが報じるほど、薬剤師の存在が医療チームをより効率的に機能させたのです。災害医療で、過去に薬剤師がここまで積極的に関わった例は、他にありません。医師をはじめ関係者から高く評価され、災害現場で薬剤師が必要不可欠な存在と認知されました。
 今年3月に修正された沖縄県地域防災計画で、沖縄県薬剤師会は指定地方公共機関として登録され、医療・救護支援、保健衛生活動に迅速に対応できるようになりました。きょう9月1日は防災の日です。皆さんにお伝えしたいことは、大規模自然災害などへの対応策を、個人でも考えておきましょう。帰宅できない場合も想定して、慢性疾患で医師に処方されている薬は、3日分を携行するようにしましょう。そして「おくすり手帳」は事故も想定して、常に携行することをお勧めします。
(吉田洋史、沖縄県薬剤師会理事)