コラム「南風」 宝探しの旅


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 生涯をかけてやりたいことを私は肩書に入れている。そのひとつが「トレジャーハンター」だ。トレジャーとは大地で採れる田から(宝)物のことである。

 私が運営する浮島ガーデンでは肉や魚を使わない。だから野菜や果実は特別なものを出したいと探し歩いているうち、その地域の人しか口にできないような山の恵みがあることを知った。例えば西表には真竹やシノル竹という細く長いタケノコがある。山に分け入って採るのも大変な上に下処理がさらに難儀で、それでも食べたいと思わせる歓(よろこ)びにあふれた山の幸だ。波照間で昔から自生している小指の先ほどの極小クワトマトや、伊江島でしかできないマーナ、やんばるのクーガイモなども市場には出回らない。
 こんな具合に宝を求め地域の方と交流していたら、もうひとつの肩書「南西諸島食文化継承委員会」が生まれた。きっかけは波照間の神司・親盛美智子さんが教えてくれた「マンズ」という神事でお供えする、長命草の和(あ)え物だ。波照間では長命草が道端に豊かに自生していて、その若葉を細く刻み、さっと湯通しし、ゴマ・みそ・にんにくを加え、一気に手で和える。お味はと言うと、にんにくが効いていてパンチがあり、瞬間的にパスタ料理に合うなと思った。かくして伝統のお供えものは現代的アレンジにより、今や店の人気メニューとなっている。
 身土不二(しんどふじ)というように土地と人は一体である。住んでいる土地のものをしっかり食べていれば元気でいられるのだ。長寿復活の鍵は伝統食材をいかに美味(おい)しく食べられるかにかかっている。そんな想いもあり、行事食に詳しい崎原綾乃さんを講師に迎え、南西諸島食文化大学なる座学をはじめた。先人たちが教えてくれた宝ものを余すところなく食べる知恵と感謝の心を継いでゆけたらと思う。
(中曽根直子、風土コーディネーター)