コラム「南風」 きょうだいが障がい児


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 「なんで、美姫は叱らない。いつも私だけ」。泣きながら訴える長女に、私は返す言葉もなく、ただ立ち尽くしてしまった。長女が小3、次女3歳の時だ。重度の身体障がいのある妹のきょうだいとして過ごしてきた長女の心の叫びだった。

「障がいのある子を中心とした生活。それでいいんだ。この子も心が育つ」「親の後ろ姿を見て子は育つ」。そう思いたい私だった。その理想に子どもを組み入れ、「優しい姉として育っている」と思っていた。それが長女には無言の圧力だったかも知れない。
 「この子は、この子なりに自分との闘いをしていたんだ」。そう気づいた。
 「この子まで…」と、健康を失う怖さから長女には行動制限や注意の言葉が多く、次女には穏やかな語り掛けが多かった。それは私自身も分かっていた。「どうせ…」という投げやりな言葉や登校拒否など、いろいろな所でサインはあった。娘の真正面からの訴えに、それまでこの子がどんな気持ちできたのか、過去のいろいろな場面が浮かんだ。
 なぜ妹は歩けないのか、なぜ普通の家族と違うのか、家族の中で自分の居場所はどこにあるのか-。分からないことだらけの中で長女は頑張ってきたのだ。「あなたのこと大好きよ。いつも心配しているよ」。その気持ちをきちんと伝えることが大事だと思い知った。そして長女との時間を、「目の前」にいるこの子にしっかり心を寄り添わせ、スキンシップを心掛けるようにした。次女も大きな声で叱るようにした。
 長女は中学生になると友達との関係など自分の世界を広げていった。大人になった娘たちと、時間を取り戻すようにいま新しい関係を築いている。
 障がい児のきょうだいは親を思うため、自分の気持ちは心の隅に置いてしまう。そんな子どもたちにも支援の手が届くことを願う。
(名幸啓子、障害児サポートハウスohana代表理事)